2022.05.20

好きなものに囲まれることも緩和に|本と草花が好きだった患者さん

 

 

 

春の訪れとともに開花した桜もあっという間に葉桜に変わり、皐月中旬の庄内平野では藤の花が見頃を迎えています。

 

 

 

 

ある春の日、桜の開花とともに私たちの介入が始まった患者さんのお話です。
退院当日ご自宅に伺うと、そのお庭にはたくさんの植木や花々が咲き誇り、入り口にある藤棚にはたくさん蕾をつけた藤の花が開花の出番を待っているようでした。

 

リビングに通されると、本人と姉妹を含む3人の素敵なマダムがおられました。
患者さんの多くはベッドに臥床していることが殆どですが、その患者さんは背筋をピンと伸ばし真っ直ぐ前を向いて座り、全く病人であることを思わせない出立ちでした。
思わず「〇〇さんはどちらにいらっしゃいますか?」と聞いてしまったほどです。

 

そんな彼女は自他ともに認めるほどの読書家で、入院前は暇さえあれば図書館へ通い、沢山の書籍を抱えて帰ってくる、そんな生活を送っていたそうです。
退院してやりたいことはもちろん「図書館へ行って本をたくさん借りること」。
鎮痛剤を服用しながらも図書館へ行くことができた時は、まるで子供のように本当に嬉しそうにその様子を語ってくれました。

 

訪問時インターホンを鳴らすと、痛みがあるにも関わらず、必ず玄関で出迎えてくれ、立ち振る舞いの美しい方でした。
そして毎回その玄関先に飾られた美しい花々は、ご自身が大切に手入れしてきたお庭の花々でした。
「花に囲まれると痛みが和らぐの」と。

 

そして蝉が鳴き始めた頃、盛夏の花々に囲まれて彼女は旅立ちました。

彼女の本に対する情熱と草花を愛する心は、訪問する私達の心をも癒してくれました。
今春もそのお庭には、きっと美しい花々や藤の花がたわわに咲いていることでしょう。

 

 

 

 

 

齊藤 佳寿
この記事の執筆者
あい庄内クリニック 院長

齊藤 佳寿 (さいとう かず)

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