2023.03.06

乳癌終末期 -母として、娘として-

 

「灯りをつけましょ雪洞に~♪」 彌生三月、桃の節句ですね。
小さな雛飾りですが、今年も我が家を彩ってくれています。
親であれば誰しも我が子の成長を願う気持ちは年中あるわけですが、そんな気持ちが一段と強くなる時期でもあります。

 

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乳癌終末期の若い女性患者さんでした。
嫁いだ先で一女をもうけ、三世帯仲良く暮らされていました。
そんな中、癌を患いセカンドオピニオンを求めて遠方の病院まで何年も通われていました。
抗がん剤だけでなく腹水が貯留してCART療法という治療も受けられていました。
旦那さんも献身的にサポートされ、セカンドオピニオンの病院に通院することが心の支えにもなっていたようです。

体調を崩し近隣の病院に入院しましたが、最期は足の不自由な実母の待つ実家で過ごしたいとのこと。
私たちが介入依頼を受けた時は、黄疸も出現し、呼吸苦も倦怠感も非常に強い段階に入っていました。

 

退院日は長年住んでいた嫁ぎ先へ。
そちらに訪問した際は、身の回りのことも自分で軽やかにこなし、娘さんの前では一瞬たりとも辛い素振りを見せませんでした。

 

数日後、実母の待つ実家へ。
その直後に往診依頼がありました。
呼吸苦が出現したとのこと。
訪問した時、畳のい草の匂いが広がる座敷に置かれた介護ベッドで彼女は休まれていました。
その傍らでお母さんが彼女の頭を優しくなでていました。
私達は酸素を直ぐに手配し、最期の時が来たことを家族みんなに知らせてもらいました。

 

その夜、彼女は息をひきとりました。
たくさんの家族に囲まれながら。

 

母として娘を見守る姿、娘として母に見守られる姿を、同時にみせてもらった数日間でした。

 

※CART療法:腹水濾過濃縮再静注法

 

 

 

 

 

齊藤 佳寿
この記事の執筆者
あい庄内クリニック 院長

齊藤 佳寿 (さいとう かず)

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